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外国人スタッフ活用、根本解決にならず 介護人材不足の厳しい現実

2008年12月19日20時59分

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(高齢者住宅新聞12月15日号)
 介護人材の不足は、今や大きな社会問題のひとつといえる。来年の介護保険制度改正では報酬3%アップが盛り込まれる予定だが、狙いは人材の確保だ。実際のところ、介護現場での人材不足はどのような状況なのだろうか。3%アップは果たして人材不足解消につながるのだろうか。人材問題について介護事業者らの声を集めてみた。
 「平成18年より介護スタッフの採用が極端に難しくなりました。私の社会福法人でも、それまでは『15人面接して1人採用』といった具合でしたが、今は『3人面接して2人採用』といった水準です。正直なところ、昔の水準なら採用を見送っていた人材でも採用しなくては運営が成り立たないような状況となっています」
 と語るのは、特定施設事業者による団体、特定施設事業者連絡協議会(特定協・東京都港区)の中辻直行代表理事。
 タムラプランニングアンドオペレーティング(東京都千代田区)の調査によれば、平成18年は、過去最大となる738カ所の有料老人ホームが開設されている。これにより、介護スタッフの取り合いが発生した。
 「ちょうどその年に、いわゆる総量規程が始まりました。もし、これがなかったら、どの事業者もどんどん有料老人ホームを開設し、もっと人材不足は深刻になっていたでしょう。人材確保のために給与を大幅に上げざるを得ず、人件費が経営を圧迫したり、人材不足のために建設はしたものの開業できない施設が続出したりしたでしょう。業界にとっては総量規制は悪名高いですが、人材確保という点からすれば、それで助かっている面もあるといえます」(中辻代表理事)
 また、特定協が以前行った調査によれば、特養に比べ有料老人ホームの介護職員給与は1ヶ月あたり数万円安いという。「特養の方が職歴の長い職員が多い、という事情もあるでしょうが、民間企業の方がコスト意識が高いため、給与が引き下げられている、という結果でしょう」(中辻代表理事)
 これからもわかるように介護業界、とりわけ民間介護事業者の人材不足は深刻なものとなっている。それを解消していくためには、いくつかの方策が考えられる。
 まず8月よりスタートしたインドネシア人介護士・看護士の受け入れなどに代表される外国人雇用があげられる。
 しかし、これも介護の現場からは「効果は期待できない」とする声が多い。ある介護事業者は「戦争体験のある年代の高齢者の中には、アジアの人に対して偏見・差別意識のある人もいます。彼らに介護を受けることに対し不快感・拒否感を示す人がいるでしょう」と語る。
 また、雇用する側が外国人の宗教・生活習慣・食生活などから生じるタブーにどこまで対応できるか、という面でも不安が残る。
 次に、最近の自動車業を始めとする製造業の経営不振で、工場労働者、特に期間工や、いわゆる日雇い派遣労働者が大量に解雇されることが考えられる。彼らに介護現場の人材不足解消を期待する声もある。
 しかし、これについても「女性の入居者は『異性に介護されるのは嫌』という人が少なくありません。介護施設の入居者は多くが女性ですから、男性の介護職員は全体の2~4割程度いればいい、というのが特定施設の現実です。一方で工場労働者のほとんどは男性ですから、仮に彼らが介護職を志望したとしても、現場としては『本当に必要とする人材を確保する』ということには直結しないでしょう」(特定協・中辻代表理事)のように、根本的な解決にはならない、という見方もある。
 最後に高齢者の雇用がある。
 「高齢者の場合は『第二の職場として働く』という人が多いでしょうから、それほど多額の給与でなくてもいい、という人もいます。あまり高い給与を出せない介護業界にとっては理想的な人材と言えます」(メディカル・ケア・サービス山崎千里社長)という声がある。
 しかし高齢者の場合は、自身の体力などの問題から、勤務可能な時間や行える業務にどうしても制約が出てくるのが難点といえるだろう。
 また、これらの人材は、いずれも長期間の雇用は難しい。
 高齢者の場合は、現在の年齢を考えても10年先まで働いてくれるとは考えにくい。8月からスタートしたインドネシア人スタッフについては、介護福祉士は4年間、看護師は3年間の間に試験に合格しなければ帰国しなくてはならないため、3年、4年以上の長期雇用につながるかは微妙と言わざるを得ないのが現実だ。
 このように、こうした人材は、介護現場の人材不足を根本的に解決をする手段にはならないとも考えられる。人材不足の解消には給与アップなどで求職者を増やし、かつ中途退職者を減らす取り組みが重要となる。来年の介護保険制度改正で盛り込まれる見込みの「報酬3%アップ」もそれを狙ってのことだ。
 しかし、介護事業者からは単なる給与アップでは本当の人材不足対策にならないのではないか、という声もある。
 太平洋シルバーサービス(東京都武蔵野市)馬島茂社長が語る。
 「介護事業者を退職した人のうち、多くは同業他社に移っているという現実から考えても、退職の理由は給与水準以外の部分、例えば職場の雰囲気や人間関係などにもある、と考えるべきでしょう。その部分の解決を図らないと人材不足は解消しません」。
 この点について、メディカル・ケア・プランニング(東京都江戸川区)山田一幸社長は「介護スタッフは2~3年でモチベーションがプッツリと切れてしまう人が多いので、定期的に環境を変えてやることが重要です」と語る。
 「介護の現場は毎日同じことの繰り返しであることに加え、熱心な人ほど重労働となり体力的に厳しくなってしまいます。そういった人には目先を変えてあげることが大切です。当社でも、グループホームからデイサービスへの配置転換などを行います。それにより給与は減りますが、日曜日は休める、ということで逆にやる気につながることもあります。給与があがったから単純に退職者が減る、ということではないでしょう」
 介護報酬改訂についてはどの分野の事業者が、どの程度アップするのか、という点は、未知数だ。しかし、仮にアップになったとしてもそれを単純に給与に上乗せするのではなく、スタッフが長期で働いてくれるためには、どのような使途が最も効果的なのか、を充分に検討する必要があるだろう。

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