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社福冬の時代に必要となる「経営能力」 特定施設運営で収益性改善

2009年05月12日12時25分

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(コンテンツ提供:高齢者住宅新聞2009年5月5日号)

公益・収益事業がカギ これからの社会福祉法人経営

社会福祉法人(以下社福)と言えば、介護業界では特別養護老人ホーム(以下特養)の運営者として知られる。
しかし、最近では社福が有料老人ホームや高専賃など、本来ならば民間事業者が運営する施設・高齢者住宅のジャンルにまで業務領域を伸ばす傾向が強くなっている。
こうした状況の背景にはどのような事情があるのか、また民間事業者側にはどのような影響が出てくることが考えられるのだろうか。


民間篤志家に福祉を任せる

初めに「社福とは何か」という点について整理してみよう。
社福は昭和26年12月1日に施行された「社会福祉事業法」(平成12年に「社会福祉法」に名称変更)により設立が認められた法人だ。
昭和20年8月まで続いた戦争によって日本国内には家族を失った高齢者や幼い子供、大陸からの引き揚げ者など行政の支援を受けなければ生活が困難な人が多数発生した。しかし、行政側は戦争で破壊された都市やインフラの復興や社会制度の立て直しに手いっぱいであり、とても福祉の充実にまで人も予算も割くことができなかった。
そこで考えついたのが「民間の篤志家に福祉を任せる」という制度だ。
高齢者や障害者などに対する社会福祉事業を目的に設立された社会福祉法人に対しては、その活動を支援するという側面から税金面での優遇制度が設けられている。
社会福祉事業については、「第一種社会福祉事業」「第二種社会福祉事業」の2つに分類されている。
このうち「第一種社会福祉事業」は「利用者への影響が大きいため経営安定を通じた利用者保護の必要性が高いもの」とされており、
原則として行政か社福しか手がけることができない、と定められている。
一方で「第二種」についてはすべて事業者が手がけることができる。
しかし、優遇措置の一方で社福に対しては「営利を追求してはならない」ということも厳しく求められている。
例えば社福の理事長の給与額は年間3600万円が上限と定められている。もし、これを超えた場合には、その法人は
「営利法人である」とみなされ、税金が課せられる可能性がある。

条件満たせば収益事業可能

さて、このように営利の追求が禁止されている社福だが、実際には介護付き有料老人ホームや高専賃運営などの事業に手を伸ばしているケースも数多く見受けられる。
有料老人ホームは、本来ならば民間が運営するべきものであるが、多くの社福が参入している。
中には聖隷福祉事業団(静岡県浜松市)のように介護付有料老人ホームだけで5棟・1500室強を運営するところもある。
こうした「社福の民間事業参入」の背景には、どのような事情があるのだろうか。
 実は社福が営利を追求することは全面的に禁止をされているわけではない。
一定の条件を満たせば、さまざまな事業を手がけることが可能となっている。
 例えば「社会福祉事業の純粋性を損なわない」「社会福祉事業の円滑な遂行を妨げない」「社会福祉事業の従たる地位にある」
「社会福祉事業とまったく縁のない事業ではない」などの条件を満たすものは「公共事業」として手がけることができる。
具体的には有料老人ホームや老健の運営などがこれに当たる。
または社福は「収益事業」を行うことも認められている。これについては賃ビルや駐車場の経営など、特に社会福祉事業と関係がないものも含まれている。
ただし「風営法の適用を受ける店舗など、社福の社会的信用性を落とす可能性のあるものは不可」などの条件が課せられている。
 このような公益・収益事業を行うことを社福に認めている背景には「適切な社会福祉事業を行うには、相応の資金が必要」という考えがある。
 そして、実際のところ社福側にも「公益・収益事業に進出しなけでばならない」といった事情もあるようだ。

報酬改定でさらに厳しく

現在、日本には約6000棟の特養があるが、うち約半数は「1法人1施設」だという。
しかも、(社)全国老人福祉施設協議会(老施協・東京都千代田区)によれば「入居定員が31人から50人という比較的小規模な特養だけで全体の約4割を占める」という。つまり、事業規模が小さく経営基盤がぜい弱な社福が多い、ということになる。
それに加えて、ここへ来て各自治体が特養への補助金を削減する傾向が強くなっている。
こうしたこともあり、ここ1~2年、経営難になった社福そのもの、または、そこが運営する特養が売りに出されるケースが増えてきているという。
生き残りのためには、公益・収益事業での収益源を確保せざるを得ない、という社福側の厳しい現実があるのだ。
 また、今年4月1日の介護報酬改定で、特養はこれまでよりも加算となったものの基礎報酬アップは見送られた。
むしろ逆に「1日4単位や6単位などといった細かな加算をいちいち取りに行ったのでは、手間ばかりかかってしまい、むしろマイナスになる」という声もある。
特養の懐具合は決して改善された、という訳ではないのだ。
この結果として社福が特定施設の運営に着手するようになっている。
 このことは民間の介護事業者にとっては憂慮すべき事態だ。前述したように社福は自治体からの補助金に加え税金面で優遇されている。このため、仮に民間が経営する有料老人ホームと同じ程度の品質サービスを提供する場合には、民間に比べて安い入居費用でも採算をとることが可能となっている。
そのため、民間側からは「民業圧迫ではないのか」という不満の声も出ているようだ。

社福に必要な経営センス

社福が有料老人ホームや高専賃を運営するケースはこれからも増え、それによる競争の激化が起こることは想像に難しくない。
 しかし、そのことは社福側にとっても懸念材料だ。現在、全国には38万人もの特養入居待機者がいる。
こうしたこともあり、多くの社福は「入居者の確保に苦労した」という経験を持っていない。
また、顧客満足度の向上などといった考えをほとんど持たず、殿様商売でも運営をして来られた、という面があった。
こうした社福が仮に価格面でのメリットは打ち出すことができても、品質の面で果たして民間の経営する有料老人ホームや高専賃と正面切って競争していけるのか、という疑問もある。
 特定施設を2棟運営する(社)神戸福生会の中辻直行理事長が語る。
 「特養は価格設定が自由に行えません。つまり入ってくるお金には限りがあるので、経営については『いかに出ていくものを削って最終的に利益を残すか』という引き算的な思考で行うことになります。
一方特定施設は、サービスを積み重ねて、それに見合った対価をもらう、という足し算的思考での経営になります。
考え方が180度異なりますので、これまでの特養のやり方で特定施設を運営すると、サービス品質の面などで競争力のない施設になるという危険性があります」
 また、社福の給与水準の高さが問題になることも考えられる。
常勤職員を比べてみると特養の職員の給与は特定施設のそれに比べて月額5万7000円も高い。これには「特養は比較的ベテランの職員が多い」「特養は要介護度の高い入居者が多く、職員は相応のスキルを持っている」などの事情もあるが、民間との差は歴然としている。
 こうした状況下で、同一法人が特定施設と特養を運営した場合に、果たして特定施設への勤務希望者が出るのか、という問題がある。
またそれを防ぐために特養の職員を特養の給与水準のまま特定施設で勤務させた場合には、特定施設の入居者から「高すぎる人件費が価格に不当反映されているのではないか」といった不満の声につながることも考えられる。

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