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高専賃運営事業者座談会 法改正の影響と今後の事業モデル

2009年08月23日13時07分

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(コンテンツ提供:高齢者住宅新聞2009年8月5日号)

 高齢者の住まいとして、市場に定着した高専賃。しかし、高齢者居住安定確保法の改正などもあり、今後の動向は不透明な部分も多い。今回は、2009年3月に設立された高齢者専用賃貸住宅事業者協会(高専協)の中心メンバー4人に、高専賃の現状や将来像について意見交換をしてもらった。

出席者(社名50音順)
プロフィール
 学研ココファン 代表取締役社長 小早川仁氏
平成2年学習研修会(学研)入社。平成16年学研ココファンを設立し高専賃に参入。平成20年7月同社代表に就任する。
 2009年5月ココファングループ持株会社の代表にも就任する。高専協副会長。

 シルバーライフネットワーク 代表取締役 向井幸一氏
芝浦工業大学卒業後、警視庁、不動産中央情報センター勤務、日本エコネット代表などを経て現在に至る。高専賃の運営管理およ
 び、高齢者住宅に関するコンサルティングが主な業務。高専協副会長。

 ニチイケアパレス 常務取締役 橋口茂博氏
医療機関などを経て平成4年民間介護事業者へ。平成9年吸収合併によりニチイ学館へ転籍。平成18年取締役に就任。ニチイリビン  
 グを設立し高専賃を新規事業開発。2008年ニチイ学館取締を退任し現職に。

 メッセージ 代表取締役会長 橋本俊明氏
昭和48年岡山大学医学部卒業。勤務医・開業医を経て昭和62年医療法人自由会を、平成5年社会福祉法人敬友会を設立し理事長 
 に就任する。平成10年メッセージ代表に就任する。2008年8月より現職。高専協会長。

<司会>高齢者住宅新聞社 網谷敏数

住まい手側に根強い需要が

 まずは自己紹介も兼ねて、皆さんが現在手がけている高専賃事業について、簡単に教えてください。

橋本 メッセージの橋本です。
高専賃は2008年1月に本格的にスタートしました。「Cアミーユ」のブランドで現在1300戸を運営しています。
これまで展開してきた有料老人ホーム「アミーユ」と異なり、1棟あたり100室と大規模なのが特徴です。

向井 シルバーライフネットワークの向井です。
栃木などで現在3棟を管理しています。2009年度内に、あと2棟手がける計画です。要介護の高齢者を対象に、自社で介護サービス
まで提供しています。

橋口 ニチイケアパレスの橋口です。
高専賃は2008年、ニチイグループのパイロット事業として1棟千葉で開設しました。一番狭い部屋でも居室面積27平米を確保しており、いわゆる「自立型」の高専賃です。
今後の計画としては2010年の1月、5月に1棟づつ開設を予定しています。

小早川 学研ココファンの小早川です。
現在、東京・神奈川などで4棟を運営中で、2010年春に2棟の開業を予定しています。今期より全国展開を視野にしています。

今後、高専賃の供給数については、どうなっていくと考えていますか。

橋本 短期的には国の高齢者政策が「施設重視か住宅重視か」によって影響を受けるのでしょうが、長期的には高専賃は絶対に増えていくでしょう。
「施設は狭い」「生活に制約がある」とのイメージが強く、自由な生活を望む高齢者に高専賃は根強いニーズがあります。

向井 住まい手のニーズに加えて、建設する側の事情もあります。
例えば土地所有者が税金対策や土地有効活用のために賃貸住宅を建てようとしても、今は少子化で若い人向けの住宅のニーズが減ってきますので、必然的に高専賃に代表される高齢者住宅を建てることになります。
こうした点も供給を増やす要因になるとおもいます。

法改正による供給への影響は

 今回の高齢者居住安定確保法改正で高専賃には居室面積25平米(注・一定条件を満たせば18平米)以上という条件が新たに設けられます。
このことは供給面にどのような影響を与えることが考えられますか。


橋本 (財)高齢者住宅財団のデータによれば、2009年1月から6月末までに8000戸の高専賃が供給されていますが、ほとんどが18平米以上です。
最近の高専賃に関して言えば、ほとんどの物件で広さは充分に確保されていますから、法改正後も新規供給のペースはそう変化しないのではないでしょうか。

小早川 当社も、これまで展開してきたモデルであれば、新設された登録条件はクリアしますので、特に影響はないと考えています。
確かに今回の法改正は業界にとっては大きなニュースですが、そうした仕組みや制度よりも、供給については「ユーザーのニーズがどこにあるのか」ということを充分に考える必要があります。

向井 実際のところ、高専賃の中には「とりあえずバリアフリーにすればいい」とだけ考え、ろくなマーケティングをせずに開設しているところが多すぎます。
逆に、本当に市場にニーズに見合ったものはまだまだ不足しているのでは、と実感します。
例えば当社が2009年7月開設するものは、7月上旬の段階で予約だけで入居待機者が出るほどでした。

自立型・介護型のビジネスモデル

 「ニーズ」という話が出ましたが、一口に高専賃と言っても、自立型、介護型、混合型とあり、利用者のニーズもバラバラです。それにより、事業者側のビジネスモデルも大きく異なると思います。
皆さんの高専賃のビジネスモデルについて、少し詳しく説明をしてもらえますか。

小早川 当社では、自立型の、介護型の両方を手がけていますが、ビジネスとしてはまったく別物である、という認識です。
例えば、建物のレンタブル比ひとつとっても、自立型なら80%ありますが介護型なら50%です。
収益モデルにしても、介護型ならば家賃収入(転貸差益)、介護保険収入、管理費の3本があり、そのすべてで採算が取れることが求められますが、自立型の場合は、転貸差益が主になります。
そういった点では自立型は一般の賃貸住宅と同じビジネスモデルですね。

橋口 当社の場合は自立型を展開していますので、今の小早川さんの話にもあったように、転貸差益と、生活支援費だけで利益をあげるモデルをつくらなくてはなりません。
当社では入居率75%で黒字になるような設定にいています。

向井 転貸差益だけで利益をあげていこうと考えたら、損益分岐点は入居率80%程度に設定することになるでしょう。
ただし、要介護者が多くなれば他に収入もありますので5割ぐらいの入居率でも元が取れると思います。
とは言っても、それをあてにしてはいけません。これまでの経験で言えば、広さ18平米の部屋でも自立の人が入ることがありますし、逆に30平米の部屋でも要介護の人が入ることもあります。
初めから、「自立に人を集めよう」「要介護の人を集めよう」とは考えにくいのが現実です。

橋本 特に「要介護専用」とアピールしない場合は、全体のうち要介護の人がどれぐらいの割合なのか、という見極めを事前にすることが重要です。当社の場合、入居対象は「自立から要介護5まで」と言っていますが、実際には約半分の入居者が要支援・要介護です。この割合は全国どこでもだいたい同じです。

小早川 また、高専賃の中に自社で訪問介護ステーションを入れている場合、入居者のうち何割の人がそこを利用するか、という見極めも重要です。
自立型の場合、仮に70人の入居者がいても、館内の介護ステーションを使うのは20人ぐらいですので残りの利用者はマーケットから確保しなくてはなりません。これでは、正直介護単体で採算に乗せるのは難しいものがあります。

橋口 逆に自立型でも食事サービスは利用率が高いですね。
当社では食事サービスの利用者は全入居者の4割ぐらいだろう、と想定していましたが実際には8割もの人が利用しています。
自立の方でも「食事の支度は面倒だ」という人は多いと思います。

自治体により異なるルール

 橋口さんのところは、自立型高専賃を運営しています。自立型の場合「まだまだ自宅で生活できる」と考えている高齢者をいかに入居させるか、という点が運営上の課題と言われています。食事サービス以外に高齢者を引きつけるポイントは何でしょうか。

橋口 一般的に「高齢者は住み慣れた街を離れたがらない」と言われていますが、そうでもありません。
例えば転勤族だった人などは住み慣れた街がありません。そうした人は、住み替え、ということに好意的です。
そういった層に向けて「高専賃では趣味などの仲間づくりができる」「将来、身体の状況が厳しくなった場合には、ニチイ学館グループで展開する介護施設に移れる」などといった点をアピールしていけば、入居者募集については、それほど難しい、というものではなうと思います。

訪問介護事業所の話になりましたが、高専賃の場合、介護・医療との連携も運営上のポイントです。
これらのサービス拠点を建物に併設する、しない、自社で運営する、しないなどさまざまな選択肢があると思いますが皆さんの考えはどうでしょうか。

小早川 診療所の併設はメリットが大きいと思います。
ただし、在宅での訪問診療点数は830点なのに対して、高専賃や特定施設での訪問診療点数は1回200点と差が設けられてしまっていますが。
また、医師の中には診療所を開設してもらったものの、あまり入居者に評判の良くない人もいますので、医師選びはしっかりと行う必要があると思います。

橋本 元気な入居者の場合は、自分で歩いてクリニックに行く、というケースもありますが、医師からすれば往診に行ったほうが儲かります。そのためか「入居者が来てもらっては困る」と明言する医師もいるほどです。
当社の場合、クリニック併設などは基本的に行っていません。仮に行う場合でも高専賃入居者以外にもサービスを提供してもらう、
ということを条件にしています。
中の方にのみサービスを提供していると、外部の人が見たときに「よくわからない建物だ」というネガティブな印象を与えてしまうことになります。

向井 当社の場合、自社で訪問介護ステーションを設けますが、高専賃入居者のみに介護サービスを提供するようにしています。
というのも、入居者からは、家賃の他に生活支援サービス費として3万円もらっているという事実があるからです。
3万円支払っている人にも、それ以外の人にも同じ介護サービスを提供する、というのは平等性から見てもどうなのだろうか、という考えがあります。この手法については「囲い込み」という評判はあるでしょうが、囲い込みをしたからこそいいサービスを提供できるといった点はあると思います。

集中減算問題をどう解決するか

 その場合は、訪問介護事業として集中減算の対象になる、という問題が浮上してくるのではないでしょうか。

向井 訪問介護事業の集中減算については、「地域内に他に訪問介護事業所がない」など、特別の事情がある、と都道府県知事が認めれば例外とすることができます。
自治体などとの交渉で、通用外になることもありますから、工夫次第でどうにでもなります。

橋本 確かに集中減算にしても何にしても、自治体の裁量権が大きい、という点はあります。このことをしっかり把握することが、高専賃運営をスムーズに行う上でのポイントになります。
また、集中減算について言えば「高専賃は特殊なケースなので、在宅介護と同じ考えで集中減算を適用するのはいかがなものか」という意見もあると思います。

橋口 自治体と言えば、適合高専賃の規定に見合った高専賃がある場合、東京都「適合高専賃としての届け出を行うように」と言ってきますが、大阪府は正反対で適合高専賃の届け出をなるべくさせないように、と考えます。
自治体によって高専賃に対する考え方に差があるのは事実です。このあたりを、しっかりと把握しておくことも重要ですね。

消費者にとってわかりにくい

小早川 高齢者居住安定確保法の改正で、高専賃の居室面積に規定が設けられますが、実際には各都道府県が実情に応じて居室面積の最低基準を定められるようになるのでは、と思われます。
そうなると「ある都道府県では開設を認められたプランなのに、別の都道府県では断られた」というケースが多発してくると思います。
自治体によってルールが異なるのは、広域に事業展開しようとしている事業者にとっては頭の痛い問題かもしれません。

向井 現在でも適合高専賃について各都道府県ごとに独自ルールがあります。これは、自治体が「高専賃は住宅なのか施設なのか」「要介護者向けなのか自立者向けなのか」という点で考えからがバラバラなのが原因です。
しかし、要介護者向けなのか自立者向けなのか、などということは運営者と入居者が決めるべきことであり、自治体がとやかく言うのは筋違いではないかと私は常々考えています。

橋本 高専賃は施設か住宅か、という点で言えば間違いなく住宅です。
しかし、高専賃の中では、「特定施設を解説したいが総量規制で開設できないので、とりあえず高専賃で建てる。将来特定施設になれるようなら特定施設になる」という目的で開設されているものもあります。
しかし、これは住宅であるべき高専賃を供給する、という主旨からは外れています。
「もともと住宅として建てられた高専賃」と「特定施設の代替として建てられた高専賃」では全く別物ですから、これをひとくくりにして「高専賃」として論じるのではなく、別に切り離して考える必要があると思います。

向井 高専賃の性格はバラバラなのは一般消費者にとってもわかりにくいですからね。

小早川 高専賃について、わかりにくいのは都道府県レベルで住宅部局と福祉部局の連携が上手くとれていないからでしょう。
東京都では、先日、高齢者住宅施策について猪瀬直樹副知事の直轄プロジェクトが立ち上がりました。
住宅局でも福祉保健局でもない知事本局に本部を置くことで、両行政のバランスの取れた高齢者住宅施策を行っていく、
という姿勢のあらわれといえるでしょう。

橋口 東京都は、高専賃の届けを出したときに、賃貸借契約者の内容まで細かくチェックするなど、良質な高専賃を供給しようとする動きは熱心ですね。

向井 実際のところひどい内容の賃貸借契約書を使っている高専賃も多いですからね。
契約書については自治体に限らず確認した方がいいでしょう。

前払い家賃など問題点が山積み

 賃貸借契約についてはどのような点が問題ですか。

向井 いろいろありますが、前払い家賃制度の存在は問題ですね。なぜ高齢者だからといって何年分もの家賃を前払いしなくてはならないのでしょうか。若い人向けの住宅でそれをしたら入居者は誰ひとりとして納得しないでしょう。
前払い制度を用いた場合、事業者側が保全をすればまだいいのですが、それも十分に行われていません。

小早川 事業者側からすれば、保全のためのコストもかかりますから、「保全はしたくない」という本音もあるでしょう。
ただし、入居者の中には、預金や現金が自分の手元にたくさんあるというのは紛失したり騙しとられたり、という危険性がある、との理由から前払いを求める声もあります。

橋本 そこについて言えば、今回の法改正で前払い家賃の保全に関する規定ができますから、事業者にとっても以前に比べ前払いをしてもらうメリットは少なくなってくると思います。
前払い家賃制度そのものが少なくなっていくのではないでしょうか。

最後に、高専賃の政策のあり方などについて、何か意見はありませんか。

橋口 現在の介護保険制度が在宅優先である、という点は疑問です。単身の高齢者が自宅ケアできるのか、という課題は残ります。
高齢者住宅の必要性、というものをしっかり認識してもらいたいと思います。

橋本 あとは「施設」と「住宅」の境をはっきりさせるべきです。有料老人ホームについては法律で定義がきっちり決まっているのですから、その定義に合わないものは住宅として考えるのが自然だと思います。そのあたりがあいまいなので無届け有料老人ホームの問題なども発生しているのではないでしょうか。

そうした、高専賃の問題を解決する、という意味からも、高専協の役割が重要になってくると思います。
最後に高専協の今後も活動などについて橋本会長から一言お願いします。

橋本 入会規定をどうするか、という点を議論しています。高齢者居住安定確保法改正により、高専賃については、一定の規定ができます。しかし、高専協に入会については、それよりも更に厳しいレベルの規定を設けることで「高専協の会員が運営する物件ならば安心」というイメージを与えることができます。
こうしたルールづくりを行うことで、良質な高専賃を供給していくことが狙いです。


参考リンク:座談会を終えて 国は高齢者住宅施策に理念を

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