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民間事業者の活用に明確な理念を トップ座談会 有料老人ホームの現状と将来像

2009年09月22日12時47分

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(コンテンツ提供:高齢者住宅新聞2009年8月5日号)

 総量規制・高専賃の台頭など有料老人ホーム事業者にとって舵取りの難しい時代だ。
また、2008年来の不況もあり、高額な入居一時金など、ビジネスモデルの見直しの必要性が生じているともいわれている。
これからの有料老人ホームのあり方について、大手3社のトップに意見交換をしてもらった。
(座談会実施日 平成21年7月10日)


パネリスト(社名50音順)
プロフィール
 ケアネット徳洲会 徳田恵子社長
●平成3年に大学を卒業し薬剤師国家資格に合格。平成9年医療法人徳洲会に入職する。平成13年、徳洲会グループの社会福祉法人陵風会理事長に就任。平成17年にケアネット徳洲会代表取締役に就任し、現在に至る。

 ベネッセスタイルケア 小林仁社長
●昭和60年福武書店(現ベネッセコーポレーション)入社。経理部、通教本部、地域営業本部等を経て介護部門に、ベネッセケア取締役、べネセスタイルケア取締役、同専務取締役を経て、平成19年4月より現職。

 ボンセジュールグループ 瀬川隆史社長(注・2009年8月1日付けでボンセジュールグループ代表には高橋陽一郎氏が就任しました)
●古河電工勤務を経て複数の外資系ファームの経営コンサルタントとして国内外企業の組織改革支援や事業戦略策定などに従事。
2008年旧ゼクスコミュニティの建て直しのために招聘を受けて代表に就任し、現在に至る。

<司会>高齢者住宅新聞社 網谷敏数


報酬アップ分はスタッフに還元

 今回は初対面の方もいると思いますので、まずは簡単に自己紹介とそれぞれの会社の有料老人ホーム事業の取り組みについて説明をお願いいます。

小林 ベネッセスタイルケアの小林です。
ベネッセが介護事業に参入したのは今から10年前のことで、現在「アリア」「グラニー&グランダ」などのブランドで140棟の有料老人ホームを運営しています。2年前に代表に就任しました。

瀬川 ボンセジュールの瀬川です。
元々は不動産デベロッパーゼクスの子会社として、要介護の方を対象とした老人ホームを運営してきましたが、2008年末に投資会社のジェイ・ウィル・パートナーズに親会社が変わりました。
ボンセジュールならびにボンセジュール・バリエ、不動産管理会社のゼクスコミュニティなどグループ各社の代表を1年前より務めています。

徳田 ケアネット徳洲会の徳田です。
私のところは医療法人徳洲会が母体、というところが他の皆さんとの違いです。徳洲会は現在25都道府県で65病院を展開しています。この病院の周囲には高齢者住宅や介護施設が必要だろう、との考えから3年前に会社を立ち上げました。
現在、特定施設とグループホームを合計11棟展開しています。

 さて、有料老人ホーム業界にとって2009年の大きな話題といえば、4月の介護報酬改定がありました。
実際に、みなさんのところでは、どの程度の報酬額増となったのでしょうか。また、アップした分は従業員にどのような形で還元したのでしょうか。

小林 会社全体平均では2.4%アップといったところです。当初は特定施設については減算と言われていましたから、
とりあえずプラスとなったことにホッとしています。アップ分については「もし報酬がアップしたら全額を職員の処遇改善に使う」という旨を公言していましたので、その通り給与に反映させました。
ただし、給与のベースアップを行うと固定費が増えてしまいますので「介護報酬手当」を新設しました。

徳田 徳洲会全体では介護福祉士など有資格者の数に対する加算が適用されたこともあり3%以上のアップとなりました。
ケアネット徳洲会では1.5%の増額です。
この分は、介護福祉士などの有資格者に対し給与分に上乗せ、という形で還元しました。

瀬川 当社では2.2%アップです。これについては全体の人件費の中に盛り込みますが、小林さんのところのように「手当」という形にはしていません。もっとも、当社ではこれとは別に6月に給与のベースアップを実施しており、スタッフの給与総額は1億円ほどアップしました。特定施設のスタッフの平均離職率は年4割と言われていますが、当社はこれよりも高い水準となっています。
これを引き下げることが当面の経営上の課題となっています。

小林 当社でも2007年の秋に新給与体制を導入しました。
これは一言で言えば「給与が上がる仕組みを明確にした」ということです。
7億円の人件費アップになりましたが、将来の目標ができたことなどの理由からスタッフの離職率は15%減少しました。

徳田 当社でも2008年秋にスキルアップ制度を導入し、これにより平均で5%給与をアップしました。

施設数の拡大を図ることの是非

瀬川 私が2008年6月に他業種からこの業界に来てまず驚いたのが、介護事業者ではしっかりとした人事制度が確立されていないところが多い、ということです。
他の業界では当たり前のスキルやキャリアと給与面の連動がなされていません。
このことは介護業界の人材不足の大きな要因になってしまっているのではないでしょうか。

小林 今回の介護報酬改定にしろ、現在政府が表明している4000億円の経済対策にしろ、介護報酬改定人材不足問題の一時的な対策にはなるでしょうが、根本的な解決にはならないでしょう。
「収入に天井がある」「人件費を下げることでしか利益が出ない」という介護事業そのものの構造転換を図らないといけないと思います。
あと考えられる解決策と言えば施設数の積極的な拡大でしょうか。

徳田 確かに、新たな施設が出来れば施設長など新たなポストが生まれ、その新たなポストがスタッフの給与増につながる、という、
いいサイクルを生み出すことができると思います。

瀬川 ただし、当社の元親会社はその積極的な拡大策が裏目に出てしまい経営的に厳しくなった、という経緯があります。
現在、当社では、その反省の意見も込めて新規の有料老人ホーム開設をストップさせ、既存ホームの経営効率化を図っています。
私が就任してからの1年間で本部のコストだけで4億円の削減に成功しました。
こうした例からもわかるように、この業界には、経営効率化の余地がまだまだあり、ということです。
それにしっかり取り組んでいれば、利益の出る企業体質にすることは難しいことではないと思います。

特定施設知らぬ自治体担当者

 施設数の拡大、と言う話が出ましたが、そのためには自治体の総量規制や国の介護施設整備計画の動向がポイントになります。これらについては、どのような感想・意見をお持ちですか。

徳田 第4期介護保険事業計画の中で、特定施設の開設を認める自治体が出てきてはいるものの、全体としては関東地方以外での新規開設はなかなか困難というのが現実ではないでしょうか。

小林 総量規制および、その緩和については、もともとが一時的なもの、という性格ですから、仮に「現在どこの自治体で開設できる」
という話しになっていたとしても、社としての長期的事業計画の中には組み込みにくい面があるのも事実です。
総量規制に関して言えば、特定施設を規制することに意味があるのか、と実感します。
仕事柄、自治体の現当者と話をすることも多いのですが、担当者の中には、特定施設とは何か、と言うことがわかっていない場合も多いのです。
「よく分からないけど規制」というのは筋の通らない話です。
総量規制についても、2009年5月に国が打ち出した介護拠点の緊急整備に対する考えにしても、「誰が何を整備するべきか」と言う考方がないままに数値だけが決められている。という印象があります。

瀬川 総量規制そのものよりも、国が我々民間企業を介護の世界でどのように活用していくか、という点についてのビジョンがないと思います。
民間企業は、仮に対価が高くなったとしても自治体や社会福祉法人ではできない良質なサービスを提供するべきです。
しかし、実際には民間企業の参入で認める一方で、全室個室の特養など、本来ならば民間が手がけるべきレベルのサービスを自治体・社会福祉法人が行っています。

徳田 特養の個室化は、特養と特定施設の境目があいまいになります。
介護施設・高齢者住宅には、たくさん種類があるのですから、それぞれに定義をはっきりさせ役割分担をしっかり図るべきですね。

小林 また、国の介護拠点整備計画案では、特定施設については何も語られていません。
では、これだけの数の介護拠点を社会福祉法人だけで増やすのでしょうか。また、果たして社会福祉法人にそこまでの財力はあるのでしょうか。そのあたりの考えがよくわからない、というのが正直な感想です。

愛媛大学と組みキャンパスで講義

 このように、国自身が居住系介護サービスを、今後どのように整備していくのか、というビジョンがはっきりとしていない中では、特定施設の舵取りには困難が伴うと思います。
ここからは特定施設の運営上の課題と解決策についてうかがいたいと思います。まずはスタッフの確保についてですが、いかがでしょうか。

徳田 不況の影響もあってか、関東地方以外はかなり人材は確保しやすくなりました。
また当社の場合は看護助手などは母体の医療法人から来てもらうことができるのでだいぶ助かってます。

小林 当社の最近の動きとして目立つのは、新卒採用の注力でしょうか。
2009年4月には304人の新卒が入社をしました。

瀬川 当社も同じですね。2009年4月には高卒・専門学校卒の新卒が約100人入社しました。
北海道・東北エリアの学校を中心にリクルート活動を行いました。このエリアは地元の大手介護事業者が少ないですし、東京や関西など大都市圏の介護事業者が進出していないことも多いですから、介護業界に興味を持っている学生を確保しやすいと思います。
実際に入社後の定着率も悪くありません。

小林 介護業界に興味を持つ学生を増やすことも重要です。
実は2009年4月より、当社が愛媛大学で講座を持っており、私をはじめ、当社のスタッフが学生を前に講義を行っています。
現在、介護の業界では介護の専門教育を受けていても介護の道に進まない学生が多いことが悩みです。
これは学校教育の中で「現場の面白さ」を十分に学生に伝え切れていないことが原因と考えられています。
「それだったら現場の人間がそれを直接学生に伝えてみよう」との考えからスタートした取り組みです。
これを他の学校でもどんどんやりたいと思います。実際に2010年4月からは東京の専門学校でもスタートさせます。

瀬川 それは面白い取り組みですね。
大学生と言えば、最近では少し前ならばとても考えられなかったような名門・一流大学の学生からの就職希望が寄せられています。
これは介護が「事業」「産業」として、将来有望であると考えられているからでしょう。
業界にとっては有難い状況だと思います。

小林 ただし、そうした高学歴の人が入社5年後、10年後でも前向きな気持ちで仕事に取り組めるポストや給与を用意できるのか、
という問題はあります。
となると、初めの話に戻りますが、今の業界の仕組みのままでは難しいでしょう。
やはり、業務を積極的に拡大していくことが、その解決策になるのではないかと思います。

エリアと価格の整合性がカギ

 業務を拡大させていくには入居者獲得もそれに伴っていかなくてはなりません。
入居者募集の現状や課題を教えてください。

瀬川 まず、この業界ではエリアマーケティングの方法論が十分に確立されていない、という点が問題だと思います。

小林 同感です。エリアと価格の整合性がきっちりとれていれば、どんな不況下でも入居者は確保できます。
例えば、2009年当社では東京都目黒区に高級ブランドの「アリア」を開設しましたが、入居率は好調です。
逆に、その整合性がきっちりとれていなければ、どれだけ実績・知名度のある業者がやっても失敗します。実際に当社でもそういった例があります。

徳田 この事業に参入するときに、他社施設について見学・研究したのですが、ある場合では、近接する施設のうち、入居金が安い方が低迷していて、高い方が好調でした。
それを見て「消費者は安いからと言って入るものではない」ということを実感しました。ちなみに好調な方の施設はベネッセさんでしたが。

瀬川 結局は費用に見合うだけのホスピタリティーが提供できていれば、入居者は満足するわけです。
しかし、ホスピタリティーは広告や言葉では表現するのにも限度があります。
実際に来て、見てもらえば伝わるとは思いますが。

小林 入居者の満足度は、実際に入居を始めてしまえば介護サービスをはじめ食事などソフトの部分のみが評価対象となりますが、見学時は建物などハード部分にも目がいきますんでアピールの仕方も工夫しなくてはなりません。

瀬川 目に見えないソフトの部分を消費者の方に伝えていくにいは、会社や施設のブランド力向上が必要ですね。
「〇〇社の施設は良質だ」と言ったことをいかに浸透させるか、が重要です。
そのためにはメディアの活用法なども変えていく必要が在るかもしれません。

徳田 やはりイメージ、ブランド力は大事です。
当社の場合も「母体が大きな医療法人だから安心」ということで入居をしてくる人が多く見られます。

小林 そう考えると、開設をする地域も重要です。
例えば、当社施設が既にいくつかある場所でしたら、周辺住民の方も「ベネッセの有料老人ホーム」というものに対する親近感もありますから、それほど大々的な販促活動を行わなくてもある程度は入居してくれますが、エリア第一号施設となると
ベネッセが介護事業を行っている」というところからの説明になりますので、やはり大変ですね。

直接的ルーツの整備が重要に

 入居者の募集方法については、最近大きな変化は見られますか。
不況の影響などはどうでしょうか。

徳田 少し前までは「自宅が売却できず資金が用意できない」「保有している株の価格が下落した」などといった理由での入居キャンセルが何件かありましたが、2009年4月以降はそういった声もなくなりました。それほど不況の影響はないかもしれません。

小林 高額のホームは2009年4月以降、やや鈍ったかな、という感じもします。
入居募集方法の変化については、なんといってもネットの台頭ですね。
10年前は「当社を知ったきっかけ」でネットが占める割合は5%でしたが今は40%です。

瀬川 確かに今はネットですね。少し前は新聞広告に紹介センターという形でしたが。
これからは消費者と当社を直でつなぐツールを以下に充実させるか、ということを考えなくてはならないと思います。

小林 当社で今検討しているのはセミナーの開催ですね。
ベネッセが介護をしている」をいうことをまず知ってもらうことが重要だと考えています。

看護師確保が大きなテーマ

 入居後の運営についてはいかがでしょうか。
ターミナルケアや看取りなども最近の有料老人ホームに求められているテーマの一つだと思いますが。

徳田 実際のところはどうなるのかまだ不明な点も多いのですが、介護療養病床に削減・廃止問題は有料老人ホームにとっても非常に大きく影響を及ぼします。
介護療養病床利用者の平均介護度は今の老健よりも高いのです。
そうした人が10万人単位で行き場を失うことになるわけですから、有料老人ホームがその受け皿になることが求められています。
当然それなりの介護体制になっていることが求められます。

小林 実は今「まどか」の新たな形態として、24時間看護師が常駐する「メディカルホームまどか」を埼玉県で運営しています。
医療機関から出ていかざるを得ない要介護高齢者が多い中で、こうした形態の有料老人ホームは必要でしょうし、
今後増やしていこう、と考えています。

徳田 医療の立場から言うと、入院患者を介護施設に移す場合には「どこのレベルの介護施設なら安心だから移してもいいだろう」と考えます。
今の小林さんの話しにあった有料老人ホームなたば、医療機関側も安心すると思います。
ただし、どこの介護施設も看護師の配置の充実に力を入れていますが、本来の医療の現場でも看護師が不足している中で、どうやって介護施設が看護師を確保していくのか、という点で問題はありますが。

瀬川 ターミナルケアや看取りへの取り組みは、優れたスタッフを育成する、という面からも重要です。
看取りを経験したスタッフはモチベーションがあがり、人間的にも大きく成長します。

小林 同感です。良い施設を作るには必要な取り組みといえると思います。

高いレベルでの医療・福祉連携を

 そろそろ時間になりますが、最後に何か一言あればお願いします。

徳田 特養待機者の問題など「介護難民」の存在は大きな社会問題だと思います。
そうした人たちを生み出さないためには高いレベルと医療と福祉が連携した展開を図ることが必要なのではないでしょうか。

瀬川 そのためには、国や自治体が単に予算を組んで補助や助成を行えばいい、というものではないと思います。
私は先日ヘルパー2級の資格を取得したのですが、それでわかったことがひとつあります。
介護とは単に世話をすることではなく、その人の人生に向き合うことだ、ということです。
そうした介護の魅力や面白さを、我々事業者をはじめ介護の関係者は世間に十分に伝えられているのか、ということを考えることも大切だと思います。

活発な意見のやり取りが行われましたが、ここで座談会を終わりにさせていただきます。
今日はどうもありがとうございました。


参考リンク:座談会を終えて リーダーシップに期待
      :ケアネット徳洲会(徳田恵子社長) 有老ホーム開発本格化 プラスPMと共同でセミナー

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